
父の遺志を継ぎ、
会社を100億円規模へ
飛躍させる
−まずは代表になった経緯から教えてください。
永草:
株式会社永賢組は、私の祖父が1995年に愛知県春日井市で創業し、土木や地域のインフラ構築に貢献してきました。父が2代目を務めていましたが、病気で急に亡くなり、ほとんど準備できないまま引き継ぐことに。2012年、私が30歳のときでした。
亡くなる2日前に父が語った「会社を100億円規模にしたかった」という言葉を受けて、会社を大きくすることを心に決めます。
私は中学高校でサッカーを、その後は総合格闘技を専門にやっていたので、経営については何もわからない状況でしたが、父との約束を守りたいという思いで一生懸命やってきました。
引き継いだ当初は10億円程度の規模だったところ、社員の皆さんや、グループ会社をはじめお世話になっている皆さんのおかげで、2025年6月に念願の100億円を達成できました。

困っている人がいたら、
逃げずに
手を差し伸べる
−会社を大きくするなかで、変えていった部分と、変えずに守った部分はありますか?
永草:
変えていったのは、仕事の進め方です。私自身ずっと運動をやっていたので、代替わり後、まずは建設業界の常識を見直すことからスタート。地域の慣例や、年功序列という枠組みを超えて、プロスポーツ選手のような社員が集まるチームを目指していきました。
大切に守った点としては、地域の方々との交流です。土木工事をやらせていただくという会社の性質上、地域との連携は欠かせません。祖父も父も、常に「利他」の精神を持っていたので、困っている人がいれば、逃げずに手を差し伸べるのが当たりまえ。それは私の体にも自然と染みついています。
現在は、地域貢献活動として、定期的に音楽のコンサートを開催。昔からいる住民の方と、新しく地域に引っ越してきた方の交流の場を提供しています。また、地域の子どもたちに向けた無料の学習塾も運営しています。これは「子どもを塾に通わせたいけれど、経済的に難しい」といった親御さんの声を受けて実現したもの。自社の空間を提供して、塾の先生をお呼びし、50人ほどの子どもたちに利用してもらっています。

それぞれの
カラーを尊重し、
共に成長していく
−今から5年後の2030年、NAGAKENはどんな組織になっていたらいいと思いますか?
永草:
父の遺志を継いで、会社を10倍の100億円規模に成長させたので、次はさらに10倍の1000億を目指していきたいです。100億円達成したときに、少し休憩しようかとも思ったのですが、社員から「ここで終わりじゃないですよね」と言われたので、そこはアスリートの気持ちで(笑)なかなか大変な数字だとは思いますが、より一層頑張りたいなと。
具体的には、M&Aで優れた技術を持っているのに、経営が難しくなってしまった会社をサポートさせていただいていて、その会社数を増やしていきたいです。
自分たちがこういう技術が欲しいから買収する、とか親会社子会社の上下関係をつくる、という形ではなくて、あくまでも対等な関係で、一緒に成長していきましょう、という考え方。もともとの社長さんも、希望があれば継続していただき、社名や風土など、その会社が持っていた「色」は大切に守っていきたいと思っています。
すべてをNAGAKENのやり方にしたい、という思いは持っていないですし、多分そういうやり方は私にはできない。その会社それぞれのやり方を尊重して、さまざまな色を持ったグループになればいいなと考えています。
CEO INTERVIEW
建築や土木をもっと身近に

自分の夢を
叶えてもらったぶん、
恩返しをしたい
−永草さんご自身が、今一番情熱を持っているものは何ですか?
永草:
自分自身がやりたいことや、欲しいものって実はほとんどなくて、人のために動くというのが一番の幸せだと感じます。祖父も父も、人のために尽力するのが好きで「昔、靴を買ってもらった」とか「助けてもらった」とか、そういったエピソードが多いんですよね。生活に困っている人がいたら、家に上がって食事をしてもらうこともありましたし、ときには会社で働いてもらうことも。同業の方にも優しくて、自分が損しようと関係ないタイプ。そのぶん会社の経営はかなり大変でしたが、周囲の方々に頼りにしていただきました。
私が代替わりしたときは、会社の規模を大きくするという夢を、社員や地域の方々に叶えてもらったので、今度は私が夢を叶える番です。とくに社員のみんなには、会社を通して自己実現してほしいし、それぞれが経営者目線に立って、自主的に動ける組織になったら良いなと考えています。
先日、社員から「保護猫の活動をしたい」という相談があったので、今は「保護猫オフィス」をつくっているところです。もともと自宅で保護猫を育てていたところ、9匹になってしまったから、会社でどうにかできないかと。そこで、地域の空き家を買い取り、会社のオフィスにして、猫を保護することにしたんです。まだ小規模ですが、ゆくゆくは大きく育てていきたい活動ですね。

旅行先でも、
その地域の会社を
訪ねる
−休日はどう過ごしているんですか?
永草:
働いている日と休日で、そこまでスイッチが切り替わるわけではないので、旅行に行っても仕事のことをつい考えてしまいます。一般的な方だと、旅先の美味しいグルメ情報を調べたり、観光スポットを調べたりすると思いますが、私がチェックするのは、その地域の建設業協会のウェブサイト。どんな会社があるのか見て、問い合わせて、見学させていただくことも多いです。その道中が旅行になっているという感じですね。
−人づてではなく、直接問い合わせるんですね。
永草:
知り合いに紹介していただくこともありますが、飛び込みで問い合わせることもあります。最初は「急に変な人が来た」と思われますけど(笑)。直接お会いすることでお互いのことがよく分かりますし、そこからM&Aにつながった事例もあるんです。M&Aについては戦略的に攻めるというよりも、一つひとつのご縁を大切にしながら、結果的に仲間が増えていくというイメージで進めています。相乗効果で双方ステップアップできたらうれしいですね。
−最後に、読者へメッセージをお願いします。
永草:
NAGAKENはこの度「新しいこと、デカデカと。」「まだない景色をつくる。」を新しいスローガンに掲げました。建築や土木というと、とっつきづらいイメージがありますが、もっと一般の方にも身近に感じてもらいたいと思っています。私たちとしては初めてのCMをつくって放映したり、地域向けのイベントを開催して、エンターテイメント要素を入れながら、親しみやすい会社を目指していきたいです。
また、若手社員にどんどん挑戦してもらって、建設業界全体の若返りを図っていきたいと考えています。会社の規模も大きくしていきたいので、私たちNAGAKENと共に成長できる仲間になっていただけたらうれしいです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

